CASE STUDY 全数画像検査の内製化

既設カメラ×内製AIで実現した
全数画像検査

ベンダー製AI検査システムを買わずに、自社で作るという選択

製造ラインの画像検査は、専用システムを導入すれば解決する——とは限りません。少量多品種の受託製造では、品種ごとに市販システムを入れるコストが見合わないからです。私たちは「すでにラインにあるカメラ」を眼として使い、判定するソフトウェアだけを自分たちで作りました。追加のハードウェア投資はゼロ。それでも実ラインで1日約7,000枚の全数検査が動いています。

Python OpenCV YOLO(物体検出AI) 既設カメラ活用
RESULTS
7,000枚/日

全数検査の規模
(判定は1枚0.01秒)

11

個数不一致トレイを
全て検出・排出

0

追加ハードウェア
投資

BACKGROUND

背景と課題

充填ラインでは、容器内に入る部品の個数が品質に直結します。1個でも足りなければ、それはお客様の手元に届いてはいけない製品です。しかし、その確認を人の目に頼っている限り、検査員の負荷は増え続け、見逃しのリスクもゼロにはなりません。

一方で、私たちは少量多品種の受託製造です。市販のAI検査システムは高性能ですが、品種ごとに導入・設定していくとコストが見合いません。「性能は必要、でも予算は青天井ではない」——この条件を満たす方法として選んだのが、内製でした。

APPROACH

取り組み

既設カメラを「眼」として活かす

ラインにはすでに画像センサーが付いていました。その設定には一切手を触れず、撮影された画像だけを読み取り専用でPCに取り込む仕組みを構築。既存の検査を止めることなく、新しい判定を並行して動かせる状態から始めました。カメラを買い足す必要も、ラインを改造する必要もありません。

判定ソフトの内製

OpenCVをベースにした検出アルゴリズムを自社で開発しました。現場のモニタにはOK/NGを大きく表示し、NGが連続すると段階的に強くなる警報音を鳴らします。全ての判定結果は日次CSVとして自動記録され、後から「いつ、どのコマが、どう判定されたか」を追跡できます。

「検査を検査する」品質保証

作って動かして終わり、にはしませんでした。判定が際どかったコマだけを自動で抽出し、翌日に人が画像を確認する日次監査を運用しています。7,000枚が目視数十枚に絞り込まれるため、現実的な工数で「機械の判定が正しかったか」を毎日検証できます。人手で正解を付けた混同行列により、精度を数字で管理しています。

AIによるダブルチェック

さらに、検出原理の異なるAI(ディープラーニングによる物体検出)を追加開発しました。学習データのラベルは既存システムの判定結果から自動生成し、数千枚規模のデータセットを一晩で構築——手作業のアノテーションはほぼゼロです。原理の異なる2つの独立した「眼」を走らせ、その食い違いだけを人が確認する。これが現在の体制です。

考え方はシンプルです。疑わしい判定だけを機械が絞り込み、人が確認する。すべてをAIに任せるのでもなく、すべてを人が見るのでもない。それぞれが得意なことを担当する分担にしました。
RESULTS

成果

検査規模7,000枚/日の全数検査(ラインタクト2〜3秒に対し、判定は1枚あたり約0.01秒)
稼働実績実ラインで数ヶ月にわたり連続運用
検出実績充填異常により流れた個数不一致トレイ11枚を全て検出し、ラインから排出(2026年7月)
見逃し独立した2方式の判定に加え、人による監査で確認した範囲において見逃しゼロ
追加ハード投資ゼロ(既設カメラ・既設PCのみを使用)
ソフトウェア費用ゼロ(オープンソースのみで構築、開発は全て内製)

※「見逃しゼロ」は、対象期間において実施した監査(際どい判定の全数確認・2方式の食い違いの全数確認)で確認した結果であり、将来にわたる無謬性を保証するものではありません。

NEXT

今後の展開

今回できあがったのは、個数検査の仕組みだけではありません。「既設カメラ+内製ソフト」という型そのものが資産です。包装不良や異物といった他の検査へ、同じ型を横展開していく予定です。

あわせて、良品の画像だけから異常を検出する方式の研究も進めています。不良品のサンプルを大量に集めなくても検査を立ち上げられるようになれば、品種が増えるたびのコストを最小化できます。少量多品種というプリマールの事業特性に、検査の仕組みを合わせていく取り組みです。